野原 聡 という男

 今から、2年7か月前。
 忙しくて一時的に人手が足りず、短期のアルバイトを募集したことがある。
 社員がほとんどのミヤモト家具で、1人〜2人しか必要でないアルバイトは、ある意味貴重な存在。
 当時、部長が20人程の面接を試みた。
 そこで、一際、目を見張る「いなかっぺ」が登場。
 チャンピオンのトレーナーに身を包み、ヘルメットをかぶっているかのようなヘアースタイル!そして口には明太子を貼り付けたかのような肉厚の唇を持つ男(これまでに一番ひどいご紹介ですが・笑)野原さんがやってきた。

 当時、高校卒業から務めた会社一筋に、勤続11年のキャリアを持つ野原さんは、務めている会社のリーマン・ショック以降の不景気を受けてしまい、たった週に3日程の勤務のみを命じられた。
 会社でアルバイトが認められたという事もあって、野原さんはミヤモト家具に面接に来たと言う訳だ。

 当初、私は短い間という事もあり、特別仲良く話すことも無く、真面目すぎて取っ付きにくい印象まで受けた。

 あれから、休む日も無く、務めている会社と忙しいミヤモト家具での日々を、彼は我がスタッフの立派な一員として、多くの時間を共にした。

 スタッフが毎年増えていく今となっては、彼にお呼びがかかる事は少ないが、それでも特別忙しい時には、まさに「救世主」のごとく登場する。
 こっちの勝手ばかりの呼び出しにも、野原さんは嫌な顔ひとつせずに応えてくれる。


 「社長、僕の務めている会社が潰れたら、ミヤモト家具で雇って下さいね!」

 なんて笑いながら話す野原さんに、

「当然です。断る理由がありません!」

 と、笑い返す私。

 今となっては月に一度や二度の出勤であったとしても、飲み会の時には必ず野原さんに、みんなが声を掛けている。
 下の写真が、今年の新入社員歓迎会の時。


     


 左が、野原さんである。
 彼は必ずと言っていいほど、飲み会の次の日に、私に電話をかけてきて、


「社長、お金はは払わなくてもよかったんでしょうか?ろくに出勤もしていないのに、本当にいつも呼んで頂いて有り難うございます」


 クチベタで、シャイな野原さんは、驚くほど律儀な一面も合わせ持つ、心優しい男である。

 彼は今年、高校を卒業してから務めた会社で、勤続14年目を迎えた。
 辞めたいと思った事など、一度や二度では無い。
 そのたびに彼は、会社や同僚への感謝の気持ちを忘れず、車輪のひとつとなり、会社を支えてきたに違いない。



                野原 聡 31歳



 数々の苦難を乗り越え、うちの若いスタッフの生きた手本となり、全てのスタッフの信頼を勝ち取った、熱き男の話。



   彼もまた、ミヤモト家具を支える、大切なひとりの勇士である。

              
                          宮本 豊彰

  ミヤモト家具
  INTERIOR SHOP MIYAMOTO
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