家具屋のギフト(最終回!)

 先日、ニューハウス工業の笹本さんから、

 「今週の木曜日にT様というお客様がお店に行きたいと言っておりました。社長のお父様とお友達だったそうですよ。」

 そう聞いて、若干戸惑ったのだが無理もない。今から17年も前のことだ。そういえば、死んだ父親の話をされたのは久しぶりだった。
 

 当時、十代だった私はオヤジの事が嫌いで、初めて本気でケンカしたのは17歳の頃。


 それからおよそ1年後、オヤジは死んだ。


 体も悪く、あまり仕事熱心ではなかったオヤジに、幾度となく反抗したのは、オヤジの事を尊敬したかったからだ…。

 あまり取りえも無く、敵の多かったオヤジのことを
 「たっちゃんは本当に優しくていい男だったよ。」
 と、言ってくれた一平飯店のおじさん。
 「ミヤモト家具をこれからもどんどん使ってやれ」
 と、ほとんどの住宅展示場でミヤモト家具の製品を置いている事を知った、オスカーホームの会長さんは、オヤジの友達だった。

 オヤジのことは本気で嫌いだったが、今はなぜかオヤジの事を人から褒められると本当に嬉しく、死んだ時は、過去を悔やみ、これでもかというほど泣きじゃくった。

 あれから17年が過ぎ、私も父親になった。
 
 木曜日ご来店予定のTさんは、あの日、オヤジの葬式にも来てくれたらしく、
 「当時、ひとり息子だったあの子、どうしてるのかなぁ〜」
 と、気にかけてくれていた事を、笹本さんからスタッフを通じて耳にした。

 なんだか、まだご来店されてもないのに、とっても嬉しかった。

 
 うちの息子は4歳だ。
 私のオヤジは、うちの息子に逢ったことも無ければ、当然この先、出逢うことすら無い。


  


 息子の隣にオヤジがいる事を想像してみた。
 テレビに夢中のテッペイを横目に、ニコニコと頭を撫でているか、顔を寄せて、ヒゲをノジリ付けているかのどちらかと思う(笑)


 いつかテッペイから尊敬される父親になりたいと思っていた。
 しかし、自分がそうであったように、どんな父親であろうと、自分にとって大切な人であることは間違いない。

 Tさんにお逢いするのが楽しみになってきた。

 オヤジがいなければ、自分はミヤモト家具をする事は無かったと思うし、つまりは、今、私を支えてくれるお客様や、スタッフのみんなとも出逢うことすら無かったであろう。


 今になって思うと、オヤジが死んで、その後出逢った人こそが、オヤジが私にくれた最高の「家具屋のギフト」だった思う。


「オヤジ、ありがとう。クリスマスや誕生日にさえ、うちは仏教だからと意味不明な事を言って(笑)俺にプレゼントをくれた事すらなかったのに…。うちのテッペイにも、いつか最高の家具屋のギフトを送ってやるよ(*^_^*)」

                          宮本 豊彰

 ミヤモト家具
 INTERIOR SHOP MIYAMOTO
 http://www.miyamoto-kagu.net/